日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
原著
浸軟皮膚における簡便かつ高感度な皮膚バリア機能評価法:テープストリッピングにより採取したマウス角質セラミドのドットブロット法による定量的解析
麦田 裕子峰松 健夫黄 麗娟須釜 淳子市川 佳映仲上 豪二朗長瀬 敬大江 真琴野口 博史森 武俊真田 弘美
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 17 巻 3 号 p. 201-212

詳細
抄録

 現在使用されている皮膚バリア機能測定法は環境による測定誤差が大きいため、臨床応用が困難である。これまで、浸軟皮膚のバリア機能低下と角質細胞間脂質減少との関連が報告されている。そこで、主要構成成分であるセラミドに着目し、ドットブロット法を用いた簡便かつ高感度なバリア機能評価法の確立を試みた。雄性C57BL/6マウスの背部皮膚を用い、さまざまな程度の浸軟皮膚および非浸軟皮膚のTEWLを測定したあと、テープストリッピング(TS)により角層を採取し、含有されるセラミドをドットブロットにて測定した。また同部位皮膚組織を蛍光抗体染色に供し組織内セラミドの分布を解析した。実験は本学動物実験委員会の承認を得て行った。結果として、TEWL値は浸軟により上昇し、皮膚バリア機能の低下を示した。蛍光抗体染色による角質内セラミドも同様に、浸軟に伴い染色性が低下した。一方、ドットブロットでは浸軟に伴い検出されるセラミドが増加し、TEWL値との正の相関が明らかとなった。これは、浸軟が分子間結合を弱め遊離セラミドが増加しているためと思われる。また、ドットブロット法によるTS含有セラミドの測定が、簡便かつ高感度な皮膚バリア機能評価法として有用であることを示唆している。今後、加齢や皮膚疾患など慢性的な皮膚バリア機能低下状態や、ヒト皮膚での応用可能性を検討する。

著者関連情報
© 2013 一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会
次の記事
feedback
Top