日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
教育講演
QOL の向上を目指した直腸癌手術とストーマケア
西澤 祐吏
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2021 年 25 巻 3 号 p. 506-514

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抄録

 直腸癌手術とそれに伴うストーマ造設の状況は、内外括約筋間直腸切除術の確立により、肛門温存率が高くなったことで変わってきた。一方でLow anterior resection syndromeは直腸癌の肛門温存手術後に高率に認める排便機能障害であり、Quality of life(QOL)の低下につながることから、積極的に介入すべき合併症である。また、肛門温存手術において吻合部の縫合不全は最も危惧する術後合併症の1 つであり、これを予防するために一時的人工肛門を造設することが多く、肛門温存率が高くなった現在では、一時的人工肛門の造設件数が増加している。術後のストーマ関連合併症では、ストーマ周囲皮膚障害が最も多く、痒みや痛みを伴うためQOL の低下や、頻回の装具交換を必要とするため経済的負担の増加にもつながる。外科技術の進歩が肛門温存率の増加に繋がった意義は大きいが、直腸癌術後の多様なQOL向上にむけた取り組みが必須となってきている。直腸癌手術においては、チーム医療で術前からストーマについて、術後の排便機能障害について、術後のQOL についてなどを患者と情報共有し、その術後もQOL の改善に積極的に介入することが重要である。

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