日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
短報
クリティカルケア領域における経口挿管チューブ圧迫部の口唇の創傷発生個体要因の検討
森脇 裕美石澤 美保子佐竹 陽子土田 敏恵貝谷 敏子田中 結華
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2021 年 25 巻 3 号 p. 622-629

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抄録

【目的】クリティカルケア領域における経口挿管患者の挿管チューブ圧迫部位の口唇の評価(水分量、表面温度)および肉眼的観察とクリティカルな状況を表す数値に着目し、創傷発生の個体要因を明らかすることである。
 【方法】対象は、A 病院ICU・CCU に入院し、経口挿管後24 時間以上経過した20 歳以上の挿管中の患者とした。抜管または挿管1 週間を限度とし、1日1回口唇の水分量および皮膚表面温度と肉眼的観察、写真撮影、カルテからの情報収集を実施した。
 【結果・考察】挿管チューブ圧迫による口唇の創傷は12 名のうち8 名に認めた。創傷発生群は、非発生群と比較し、皮膚が脆弱になり外力の影響を受けやすくなる要因とされている栄養状態および口唇の水分量が有意に低く、BMI については有意に高いことが明らかとなった。また、創傷発生群はAPACH ⅡスコアやCRP 値が非発生群にくらべ高い傾向を認めたことや、多くの対象患者に顔面浮腫が発生し創傷発生を約7 割の患者に認めたことから、これらは挿管チューブ圧迫による口唇の創傷発生に影響することが考えられた。表面温度に関しては、創傷発生群と非発生群において差は認めなかった。挿管チューブ圧迫に対する口唇の創傷の予防ケアとして、口唇の保湿ケアの必要性が示され、BMI の高い患者に対しては挿管チューブ圧迫部のより頻回な観察や除圧ケアの必要性が示唆された。

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