2025 年 10 巻 1 号 p. 1-9
皮膚は生体の最外層のバリアーであり,皮膚の常在菌叢は皮膚バリア機能の重要な要素である.宿主-微生物の相互作用の破綻は,アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの慢性炎症疾患と深く関連する一方で,炎症を抑制し治療薬のシーズとなり得る皮膚常在菌の存在が指摘されている.本稿では皮膚常在菌のひとつであるStaphylococcus cohniiの皮膚炎抑制能と,皮膚に定着した細菌の遺伝子発現解析で用いたプロテオミクスの手法を紹介する.さらに皮膚常在菌の棲家となる皮膚最外層の角層について,内側から弱酸性-酸性-中性の異なるpHによる明瞭な三層構造を呈すること,角層のタンパク質解析について最新の知見を含めて紹介する.タンパク質解析を含めた様々な手法を用いることで,皮膚常在菌と角層の相互作用を解明し,皮膚常在菌による新たな治療法の開発が期待される.