2017 年 2 巻 1 号 p. 1-6
先天性グリコシル化異常症(CDG)は糖タンパク質の糖鎖の欠失あるいはグリコフォームプロファイルの異常(特定糖鎖の増加や減少)を来す疾患の総称である.30年あまり前にCDGが登場して以来,50を超える病型(責任遺伝子)が同定され,その数は増加しつつある.CDGは糖鎖の重要性を端的に示すとともに,それぞれの病型がもつ疾患としての表現型や病理は糖鎖の生物機能の多様性を表している.CDGは多彩な症状ゆえに診断が困難であり,最近は全エクソーム解析が行われることが多くなったが,糖タンパク質の糖鎖異常をMSによって同定する分子診断は迅速・簡便なスクリーニング法として有用である.CDGの歴史とMSによる分子診断法について,グリコフォームプロファイルの数値化あるいは相対定量など技術的な側面に触れつつ解説する.