2020 年 5 巻 2 号 p. 33-43
Human immunodeficiency virus type 1(HIV-1)はCD4陽性T細胞を始めとする免疫細胞に感染する.これまでに,免疫細胞内の宿主性タンパク質によるHIV-1複製制御機構は数多く報告されている.しかしながら,HIV-1粒子内に取込まれる宿主性タンパク質については十分に検討されていない.したがって,ウイルス粒子内宿主性タンパク質の同定およびHIV-複製における機能解析は,HIV-1複製機構の解明に向けた一つの手段となる.また,ウイルス性タンパク質は細胞内の翻訳後修飾酵素を利用し,その機能の多様性を獲得している.したがって,ウイルス性タンパク質の受ける翻訳後修飾の同定および機能解析も,HIV-1複製機構の解明において重要である.本総合論文では,感染性HIV-1粒子そのものを試料としたプロテオーム解析を通して明らかにした,Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseによるHIV-1複製阻害機構とウイルス性タンパク質であるカプシドが受ける翻訳後修飾の重要性について解説する.