人口学研究
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論文
年齢別死亡率のパラメタライズドモデル : 全死因と主要死因
南條 善治重松 峻夫吉永 一彦
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1990 年 13 巻 p. 27-35

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抄録

この論文は全年齢区間での日本の全死因および主要死因の年齢別死亡率パターンを一つの数式であらわした,いわゆるパラメタライズドモデルに関するものである。全死因の場合にはこれまで多くの数式が年齢別死亡率に適用され,このモデルによって死亡率の平滑化,補間,死亡率の比較や死亡率の将来予測などに広く用いられているHeligman-Pollardモデルを1895-1985年の各年における日本の全死因の年齢別死亡率に適用した。4種類のコンピュータプログラムが用いられたが,適合の良さにやや問題があるのは1900年前後, 1945年前後, 1980年以降である。古い時代においてはデータの不備のためと思われるが, 1980年以降については死亡率曲線の形がこのモデルからわずかながらはずれて来ているためと思われる。従って今後よりよい適合のためには上記モデルを少し改良すべきかもしれない。このモデルの8パラメタの我々の表に基づいて1895-1985年における我が国の年齢別死亡率低下の歴史が説明された。ついで死因別死亡率に対するモデルとして悪性新生物,心疾患および脳血管疾患について新しいパラメタライズドモデルが試みられた。この様な結果は外国でも報告されていない。本研究は死亡率のモデル研究の初期の段階に過ぎず,もちろん満足すべきものではない。また年齢別死亡率パターンの将来推計ではモデルの持つパラメタの数が多く扱いにくいといわれる。そのためパラメタの将来推計に対し多次元としての新しい手法が研究されている。我々の死亡率モデルの将来研究として現在のモデルの改良とともに全く別の方法をも考慮している。

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© 1990 日本人口学会
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