人口学研究
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研究ノート
人口逆転現象とその地域的特性
宮崎 禮次郎
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1986 年 9 巻 p. 71-75

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抄録
人口自然動態逆転は,1955年からの経済の急速な成長に伴ない,若年労働力が農山村から都会に流出したこと,農山村における出生力の低下に大きく影響を受けている。それは1968年以後に,農山村の人口の年令構造を混乱し,出生率を低下せしめた。かくして逆転は,広島・岡山・島根・山口各県の中国山地の町村,高知・徳島・愛媛の四国山地の町村,鹿児島・大分など九州山地町村を核心地域として現れ,時の経過するにつれて深化し,また1970年以後には紀伊半島・中部・関東から東北・北海道に拡大傾向を示している。近年は東京・大阪・京都など巨大都市の都心区部の人口減少著しい地域でもみられるにいたった。逆転の深化した地域ほど,若者をして都市への流出を選択せしめる要因をより多く有する地域である。森林面積率大,可住地面積率,耕地面積率共に小さく,一戸当りの栽地面積が狭少,かつ低所得地域で,居住環境に恵まれていない。人口動態の逆転した地域=若者の流出した地域は,結果として,人口減少・人口の高令化,第2,第3次産業が相対的低下し,財政力指数の極めて低い地域である。
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© 1986 日本人口学会
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