主催: 公益社団法人日本薬理学会
会議名: 第95回日本薬理学会年会
回次: 95
開催地: Fukuoka
開催日: 2022/03/07 - 2022/03/09
近年、麻酔薬ケタミンがうつ病の画期的な治療薬として注目されている。ケタミンは治療抵抗性うつ病患者に投与して数時間後に抗うつ効果を示し、その効果は1週間以上持続する。さらに、ケタミンはうつ病患者の自殺願望、希死念慮も劇的に改善し、自殺予防という点からも注目されている。ケタミンは、不斉炭素を有しているので、二つの光学異性体を有する。わが国で使用されている麻酔薬ケタミンはラセミ体である。米国Johnson & Johnson社は、NMDA受容体への親和性が強いエスケタミンを開発し、2019年に治療抵抗性うつ病の治療薬として、米国と欧州で承認された。一方、演者らはNMDA受容体への親和性が弱いアールケタミンの方が、エスケタミンより抗うつ作用が強く、副作用が少ないことを発見した。現在、米国企業がアールケタミンの第二相臨床治験を海外で実施中であり、わが国では大塚製薬株式会社が第一相臨床治験を準備中である。本教育講演では、千葉大学で開発した新規抗うつ薬アールケタミンの最新知見について議論したい。