日本薬理学会年会要旨集
Online ISSN : 2435-4953
第95回日本薬理学会年会
セッションID: 95_3-SL11
会議情報

特別講演
iPS細胞由来オルガノイドを用いたヒト腎臓発生と病態の解析
*西中村 隆一
著者情報
会議録・要旨集 オープンアクセス

詳細
抄録

腎不全による人工透析患者数は33万人、その医療費は年間1.5兆円を越えている。腎臓を作るにはネフロン前駆細胞と尿管芽の二つが必須であり、前者からは糸球体と尿細管が、後者からは集合管・尿管が形成される。我々は腎臓の正しい起源を同定することによって、ヒトiPS細胞からネフロン前駆細胞を経由して糸球体および尿細管を誘導できることを報告した (Cell Stem Cell 2014)。ヒトiPS細胞由来のネフロン前駆細胞をマウスに移植すると、ヒト糸球体がマウス血管と接続して糸球体上皮の成熟が進む。これらの技術を応用することによって、先天性ネフローゼ症候群の患者由来iPS細胞からネフロンオルガノイドを誘導して糸球体の異常を再現した (Stem Cell Rep 2018)。さらに、もう一つの腎臓前駆組織である尿管芽の誘導にも成功し、分岐する集合管の周囲にネフロンが配置された腎臓本来の構造をマウスでは再構築できることを示した (Cell Stem Cell 2017)。また多発性嚢胞腎患者由来のiPS 細胞から作ったヒト尿管芽オルガノイドを用いて嚢胞形成を再現した (J Am Soc Nephrol 2020)。一方で、間質前駆細胞という3つ目の前駆細胞の重要性が判明したため、これを誘導することで高次構造をもったヒト腎臓の作製を目指している。

著者関連情報
© 2022 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top