日本薬理学会年会要旨集
Online ISSN : 2435-4953
第95回日本薬理学会年会
セッションID: 95_3-YAL3
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第37回 学術奨励賞受賞講演
神経回路の形成・可塑性のメカニズムと病態生理学的意義の解明
篠原 亮太
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抄録

神経回路は発生初期には主に遺伝的プログラムによって形成されるが、生後は外的因子の影響を受け再編成される。我々は外的因子として社会や環境から受けるストレスに着目し、ストレスによる神経回路の変化とその機能的意義を解析してきた。長期的(慢性)ストレスは内側前頭前野のドパミン応答を抑制してうつ様行動を促す。この行動変化に伴い、長期的ストレスでは内側前頭前野で錐体神経細胞の樹状突起が委縮する。一方で、短期的(急性)ストレスでは内側前頭前野のドパミン応答とドパミンD1受容体シグナルを介してうつ様行動が抑制されること、ドパミンD1受容体依存的に錐体神経細胞の樹状突起の増生が誘導されることを見出した。このストレス抵抗性の増強に付随して、短期的ストレスは内側前頭前野のドパミンD1受容体を介して拡張扁桃体の神経活動を高める。また、ケタミンの即効性抗うつ作用が短期的ストレスと類似した神経回路を介することも示してきた。本講演では、ストレス・うつ病における神経回路の可塑性について、最新の知見と今後の展望を紹介したい。

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© 2022 本論文著者
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