日本薬理学会年会要旨集
Online ISSN : 2435-4953
第97回日本薬理学会年会
セッションID: 97_2-B-SL10
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特別講演
創薬精神について
*内藤 晴夫
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抄録

世界初のアルツハイマー病(AD)疾患修飾薬「レケンビ」が米国に次いで本年9月に本邦で承認され認知症治療は新たな時代を迎えた。ここまでエーザイは40年以上にわたって認知症領域で研究開発を続けてきたが、それは失敗を乗り越えリスクを分散させる工夫の連続であった。1997年に「アリセプト」を発売し世界初のAD薬の開発に成功したが、その後次世代の創薬を目指す日々が続いた。ADの根本原因であるアミロイドβ(Aβ)カスケード仮説に基づいた様々な新薬候補品を開発するもドロップが相次いだ。その中でアカデミア連携による家族性AD研究の成果を活用し、慎重な臨床研究により創薬したテーマが抗Aβプロトフィブリル抗体「レケンビ」であった。創薬は失敗なくして成功はない、失敗に耐えていると経験知が蓄積されていく。この経験知こそが創薬における成功の要諦であり、新薬開発という名の船を正しい針路へと導いてくれる「海図」となる。そしてその海図を書き込み、ナビゲートするキャプテンの存在も欠かせない。この機会に、AD当事者との共感の上に存在する「創薬精神」について触れたい。

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© 2023 本論文著者
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