2023 年 3 巻 2 号 p. 2_1-2_5
理学療法教育に限らず,教育は複雑で明確な答えのない領域であり,文脈・条件に依存するとされている。そのため教育に関する研究には質的研究を用いる事は有用とされている。しかし理学療法領域では質的研究にて実施されている数は少ない。対象者の心情などの内面的世界を理解することが目的の質的研究は,客観性を重視し一般化を目的とする量的研究の視点でとらえると根拠の低い研究と誤解されがちである。質的研究とは何か,どのような方法で実施するのかが理解されていないことが原因の一つであろう。量的研究と質的研究は対立するものではなく両輪としてとらえるべきであり,お互いの利点を活かして活用していることが重要となる。本稿の目的は質的研究とは何か,実施する際の心構え,研究の進め方,質を高めるための配慮に関して理学療法士教育を例にあげ説明し,多くの研究者が魅力を感じ活用していただくことである。