Abstract
本研究は、2013年以降急激に増加した訪日外国人旅行客のなかで特に中国人客の量的拡大に的確に対応した中国新興大手観光企業の春秋旅行に焦点をあて、同社の急成長とその要因について、実態調査や文献調査を通じて、中国の国有大手旅行社の事例との対比において、その一端を明らかにするものである。春秋旅行の急成長の要因は、第一に、競争戦略として、多角化の一形態である「他業種垂直統合型経営」を行ったことにより、旅行会社として培ってきたノウハウやネットワークと新しい航空会社の特徴を連携させて、低価格で単純化した旅行商品を大量生産して大量集客を実現し競争優位を確保したこと、第二に、人材管理戦略として「短期循環型人材管理」を採用し、「生産性」を高め、内部資源を弾力的に活用して、他社に先んじて市場の急激な変化に的確に対応したことにあることが明らかになった。特に同社はほぼ同時期に両戦略を採用してシナジー効果を追求し成功した点が注目される。