2025 年 35 巻 suppl.2 号 p. S60-
【はじめに】近年、全国の病院の7割以上が赤字経営とされ、病院経営の安定が喫緊の課題となっている。こうした状況の中で、広報は単なる情報発信にとどまらず、組織の方針や魅力を伝え、関係者と「つながる」機能を担い、経営や採用、人材定着の観点からも重要性が高まっている。理学療法士 (以下:PT)にとってはやや縁遠い分野と感じられるかもしれないが、経営や人材の観点からも今後注目すべき領域である。本報告では、広報を担当するPTの立場から、実務を通じて得られた気づきや視点を整理・共有し、広報が組織や経営に果たす役割について再考する機会としたい。【活動状況】当法人は、120床の療養型・回復期リハビリテーション病棟を有し、グループホーム・サービス付き高齢者向け住宅を併設している。職員数は非常勤を含め約200名である。2024年度より広報体制を見直し、私は会長室所属として、広報、情報システム、人事、経営戦略に関わると同時に、PTとして臨床業務も担当している。複数の業務を横断する中で、病院経営の全体像を意識するようになり、広報が単独の業務ではなく、他の機能と有機的に結びついていることを実感している。広報活動としては、主に以下のような取り組みを行っている。1)法人外広報として、公式Instagram・Facebook・LINEアカウントを運用し、病院の日常や職員の雰囲気、地域との取り組みを発信している。また、見学会や説明会などの外部向けイベント時には、チラシやスライドなどの資料も作成し、SNS以外の手段も活用しながら、対外的な情報発信を強化している。2)法人内広報としては、ポスター掲示やイントラネットでの情報共有を中心に行い、法人理念の浸透や各部署の活動紹介を通じて、職員間の理解やエンゲージメント向上に取り組んでいる。【今後の課題】病院の魅力や理念を地域住民や求職者、さらには他医療機関に発信することは、信頼関係の構築や紹介件数の増加、収益向上に寄与する。また、職場の雰囲気や方針を継続的に発信することは、採用活動の効率化や離職防止につながり、人材紹介会社の利用や再採用にかかるコスト削減など、経営面での効果も期待できる。特に中小病院では、こうした広報の役割が今後さらに重要になると考えられる。一方で、専任体制の不在や業務の属人化により、広報が断片的・孤立的になっている施設も少なくない。広島県内でも、広報に関する相談やノウハウ共有の場が整っておらず、実践知が分散している現状がある。今後は、県内で広報に携わるPTや他職種が立場を越えてゆるやかにつながり、気づきや課題を共有しながら互いに学び合える関係性を育てていきたい。本報告がそのきっかけとなり、広島県内における広報実践者のつながり作りが少しでも前進することを願っている。広報は経営・組織・地域をつなぐハブ機能を担うものであり、その視点を共有し広げていくこと自体が、本学会テーマ「CONNECT」の実践であると考える。【倫理的配慮】本報告は、広報活動に関する組織内の実践事例をまとめたものであり、人体への影響や医療情報の取扱いは含みません。SNS等で掲載する写真やエピソードについては、本人およびご家族の同意を得た上で使用しています。報告内容は所属機関で確認を行い、公益社団法人広島県理学療法士会の倫理規程およびヘルシンキ宣言に基づき、個人情報の保護に十分配慮しています。