阿武隈山系に位置する人口約6,000 人の飯舘村は,山間高冷地という立地条件下,広大な山野を活かした畜産,冷涼な気候を生かした花きや高原野菜栽培が高い評価を得ていた。しかし,平成23 年3月の東京電力福島第一原子力発電所の原子力災害により,全村避難を余儀なくされ,村民は6年以上に及ぶ長期間の避難生活を強いられた。その結果,地域コミュニティーや村民生活は根底から破壊された。いいたて結い農園は村のほぼ中央にある大久保・外内地域に位置している。避難解除後の平成29 年に約25 人の有志で作った「大久保・外内復興隊」の活動で,地域の人達が集うことや共同作業の大切さを改めて知った。そこで,今後も継続して地域での共同事業を行うため,令和3年4 月に大久保・外内全世帯(49 戸)が構成員となり,「いいたて結い農園」(一般社団法人)が設立された。特に参加者は高齢者が多いことに鑑み,今まで培った栽培技術や忍耐力を要する荏胡麻や蕎麦など,雑穀類の栽培と加工販売事業や,福島大学や都市部の消費者団体などとの交流事業を積極的に行っている。「高齢者になっても元気で働ける地域」「なんとなく楽しい結の郷」を目標に,原発事故で失われた地域の再生を図りたいと思っている。