抄録
凍結,融解後の馬精子の生存におよぼす要因を吟味するため数次の実験を行ない次の結果を得た。
1.精液濃縮のための遠心分離は,凍結,融解後の精子生存率の改善に効果的であった。
2.精液を遠沈するためには,事前に予備希釈を行なう必要があり,その組成は卵黄,ブドウ糖の両者を含むことが必要で,添加量は精液と等量~1/4量が適当である。
3.遠沈後の濃縮精液に対する凍結用希釈液の添加は室温または5°Cに冷却後に一度に実施しても差はなかった。
4.希釈精液を5°Cまで冷却するさい,室温から5°Cの気温中で直接冷却するか,または氷水中に直ちに浸漬しても,精子生存率に悪影響は認められなかった。このさいの精液量の多少は0.1ml以上であれば考慮する必要がない。
5.錠剤化凍結法とストロー,アンプルを利用する液体窒素ガス凍結法との比較では,錠剤とストローが良好で,グリセリン濃度は錠剤化凍結,ストロー法ともに3.5, 5.5, 7.0%の間に有意差はなかった。錠剤化凍結とストロー法の問の精子生存率の比較では,グリセリン0%の場合のみが有意差が認められ,前者が良好であった。
6.ドライアイス粉末,液体窒素中で保存された,各種のグリセリン濃度を含むしょ糖,ラフィノース液を希釈液とする錠剤化凍結精液は,90日以内の保存期間では精子生存率の変化は両保存温度ともに明らかでない。
また,しょ糖,ラフィノースの希釈液の間およびドライアイス保存と液体窒素保存の間の差は,殆ど認められず,勿論有意でもなかった。