家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
ウシ胎児の発育に関する研究
武石 昌敬
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1974 年 19 巻 4 号 p. 127-135

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抄録

胎児は母体の子宮内で母体一胎盤一子宮という栄養と内分泌の複雑な支配環境のもとで発育する。胎児の発育と内分泌の支配に関して, JOSTら1) およびDICZFALUSYら2~4) は, 動物の種によって, 内分泌活動の開始時期に差があり, さらにJOSTら1) はウサギについて, 胎児性腺の精巣は胎生の初期から内分泌活動を開始すると報告している。
ウシ胎児の発育とその内分泌支配については, 雌雄双胎牛における雌牛のフリーマーチンの成因解明のため多くの研究がなされており, WITSCH5) は, corticomedu-l1aryantagonismの性分化説を唱えたのに対して,LILLIE6,7) およびKELLER & TANDLER8) は内分泌学的に胎生初期における精巣からの雄性ホルモンの分泌開始が卵巣の雌性ホルモンの分泌開始より早いため雄胎児の雄性ホルモンが循環血液によって雌胎児の副性器に作用し, その発育を抑制阻害するためであろうと推定した。その後, STRUCK9) によってウシの雄胎児の精巣は, 雌胎児の卵巣より早期に内分泌活動を開始し, 男性ホルモンの分泌が開始されることが明らかにされた。このようにウシ胎児の発育と内分泌との関係は, フリーマーチンの現象を主な対象として研究が進められてきた。
著者は10), ウシ胎児の発育成長の経過と胎児性腺の発育およびその内分泌と副性器の発達経過などの関係について, 妊娠早期から分娩に至るまでの多数の屠場材料によって, 月令毎に胎児を形態学的ならびに内分泌学的に調査研究し, 胎児の発育と内分泌支配に関して多くの知見を得ることができた。

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