家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
性成熟前の雌豚における発情•排卵の誘起ならびにその受精成績について
花田 章岩本 雅幸浅井 孝康
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1977 年 22 巻 4 号 p. 150-156

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抄録

約180日令の性成熟前の雌豚計27頭に,PMSG 750 iuとHCG 500iuまたは合成黄体形成ホルモン放出ホルモンの類縁物質(LHRH-A)0.1mgをそれぞれ72時間間隔で分離投与し(処置法AまたはC),あるいはPMSG 400iuとHCG 200iuを混合1回投与し(処置法B),発情と排卵の誘起を試みると共に,処置開始後98時間で人工授精した場合の受精成績を比較検討した。また,処置開始後88時間でエストリオール(ET)10mgを投与した場合の影響についてもあわせて調査した(処置法A',B',C')。
処置豚は全て外陰部の色調と腫脹の状態に変化を示し,その反応のピークは処置開始後約92時間から100時間にかけて認められた。しかし,雄を許容する状態の発情の誘起例は少なく処置豚の30%にとどまった。ET注射後,外陰部徴候はやや増幅されその影響は長時間持続したが,雄を許容する状態の発情の誘起には顕著な効果は認められなかった。その結果,人工授精時に外陰部からの精液の漏出なく注入できたのは処置豚の22.2%であった。
処置開始後141時間でと殺したところ,B'区の2頭を除いて全て排卵が誘起された。排卵数は比較的少なく平均8.6個であったが,変異が大きく処置法間での差は認められなかった。卵回収率は処置法A,B,C区で96~100%と極めて良好であったが,ETを投与したA',C'区では50~62.5%の低い成績であった。受精卵は排卵した雌の80%から回収された。受精卵の全く認められなかった個体での不受精原因は,用いた処置法によるものではなく,原因不明の排卵遅延に主として起因するものと推察された。回収卵の受精率は,A区で有意に高かった(82%)ほかは処置法による差を認めなかった(総平均64.5%)。しかし,受精卵の発育ステージは用いた処置法によって異なった:CとC'区で最も発育が進み(61.4%は分割卵),ついでAとA'区(35.4%が分割卵)で,B区では全て前核期卵であった。この卵の発育差からみて,用いる処置法により排卵時刻に微妙な差が生ずる可能性があり,人工授精のタイミングに注意する必要のあることが示唆された。
以上のような誘起排卵後に正常な発情周期の反復が認められるか,また高い受胎率と正常範囲の産子数が得られるかどうかについては目下検討中である。

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