家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
体液及び細菌等による精子凝集現象について
第1報 血液,生殖器分泌物,細菌等の牛精子凝集性について
小笠 晃松山 茂須川 章夫
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1962 年 7 巻 4 号 p. 169-174

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抄録

以上種々の体液細菌等について観察した牛精子の凝集現象を要約すると次の様である。
1. 野外雌牛血清59例中48例に精子凝集が起り,うち36例は20倍稀釈でも凝集し, 100倍を越えるものは22例,200倍を越えるものは15例認めた。
性周期による雌牛血清の精子凝集性に及ぼす差は明らかでないが,精液別にみると若干の差が認められた。これらの血清は56°C 30分加熱しても凝集を発現し,かなり耐熱性である。
2. 子宮洗滌液,頸管粘液,では少数例に極めて軽度の凝集がみられた程度であるが,頸管部を強く刺戟して出血を起させた場合には粘液中に侵入した精子は凝集し精子運動性を著しく阻害した。
3. 精子を凝集させる大腸菌はKAUFFMAN標準大腸菌20株中9株にみられ,精子運動性を著しく減退させた。頸管粘液に凝集性大腸菌を添加したものについての精子受容性は不良で,侵入性~運動性共に著しく妨げられた。大腸菌による凝集は個体別精液では,差が認められないが,死精子は凝集性が不定となり判定困難である。加熱菌による精子凝集性は100°C 30分では減弱した。菌量と精子凝集性の関係は感作15分で菌量0.0313mg/ccまで24時間で0.0039mg/ccまで凝集する。精子濃度は1~2億/cc位が判定しやすい。
4. 尿には精子凝集を発現させる作用はない。
5. 卵胞嚢腫内容液は血清と同様明瞭な凝集が認められた。
6. 去勢牛の副性器分泌液は精子を凝集させるが,該牛にTestosterone投与すると分泌物の性状が改善され,凝集陰性となるが, Estrogenにはその作用は認められない。
7. 牛精子は塩類溶液で凝集しない。
8. 牛精子の凝集は3型に分けられ, head-head agglutination及びtail-tail agglutination, head-tailの混合凝集であってthigmotropismやchemotropismと区別され特異的なものである。

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