抄録
ブタ精漿ならびに精漿第1および第2分画の受精に及ぼす効果をマウスを用いた体外受精への影響によって検討した。ブタ精漿を1%以上含む培地内では受精は完全に抑制されることが知られた。ブタ精漿の存在はマウス精子の運動性には悪影響を及ぼさず,受精の不成立は精子が卵子の透明帯を通過できないことに起因していたが,精漿を10%の濃度で含む培地内では卵子を包んでいる卵丘の離散も抑制されることが観察された。なおブタ精漿による受精の阻止作用は卵丘細胞をあらかじめヒアルロニダーゼ処理によって除去した裸化卵子についても認められた。
精漿の第1分画および第2分画についてはゲル炉過で溶出したままの濃度(0.071mg/mlおよび0.112 mg/ml蛋白質)では受精への影響は認められなかったが,濃縮した第1分画(2.3mg/ml蛋白質)が10%受精用培地に存在すると,受精は阻止された。一方,濃縮第2分画(18.4mg/ml蛋白質)が10%受精用培地に含有した場合では43.3%の卵子が受精した。
以上の結果からブタ精漿はマウス精子の生存性および運動性を損わず受精成立を強力に阻止することが明らかにされ,その有効因子の1つは精漿第1分画であると推定された。