家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
ウシ受精卵移植における非手術的移植に関する研究
高橋 芳幸
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1983 年 29 巻 3 号 p. 136-139

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抄録

牛の受精卵移植技術を実用化し,より広く普及させるために簡易的で安定した受胎成績が期待できる非手術的移植について検討を加えた。
非手術的移植法の中でも,直腸腟法による人工授精と同じように子宮頸管を経由して受精卵を子宮角内に注入移植する頸管経由法は,術式が取り付き易く簡便であった。しかし,移植器具として人工授精用のストロー精液注入器をそのまま腟内に挿入すると,外陰部や腟内に存在する細菌を子宮内に持ち込み,子宮内を汚染することが判った。そこで,この子宮内汚染を防止するために移植器具に覆いを付けて子宮頸管外口部まで挿入する移植手技に改善した。その結果,覆いを付けることによって子宮内汚染防止に効果があり,手術的移植法による受胎成績と同程度の約60%の受胎率が得られることが示された。さらに,多数の技術者にこの頸管経由法の術者を依頼して応用試験を行った結果,移植経験がほとんど無い技術者でも,日常直腸検査や人工授精などに携わっている繁殖技術者であれば,50~60%の受胎成績が得られることが実証された。本移植手技によって受胎した受卵牛の流•死産の発生は約10%であり,他の移植方法により受胎した場合の発生率より少ない傾向にあった。
頸管経由法をより安定した移植技術として確立するためには,まだ不明の点も多い。しかし,最近本邦においても受精卵移植技術が普及•実用化されようとしており,その中で本移植手技が広く利用されるようになった。今後,より多頭数の移植試験や種々の研究によって頸管経由法がさらに改善され,受精卵移植の普及に役立つことを期待する。

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