家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
偽妊娠受容雌の卵管へ移植されたハムスター2細胞期胚の新生仔への発生について
笠井 健吉橋本 肇佐々木 淳寿
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 29 巻 3 号 p. 158-161

詳細
抄録

ハムスターにおける1~2細胞期胚の移植により新生仔が得られた報告は,今日まで,なされていない。本研究では,体内受精に由来するハムスター2細胞期胚を偽妊娠雌ハムスターの卵管へ移植し,新生仔への発生について検討した。卵子提供雌には,未経産の成熟雌ゴールデンハムスターを用い,交配には同種の成熟雄ハムスターを用いた。2細胞期胚の採取は,妊娠第2日目(精子確認日を妊娠第1日目)の13:00から16:00の間に卵管灌流法によって行った。一方,偽妊娠誘起は,精管結紮を施し不妊交尾を確認した雄を用いて行った。移植は,偽妊娠第1日目および第2日目の受容雌の卵管へ,毛細管ピペットを用いて行った。すなわち,14:00から17:00の間に実体顕微鏡下で受容雌当り10~20個の胚を移植した。培養液としては,修正KRB液およびTC-199液を用い,胚の採取から移植まで一貫して同一培養液を使用した。
合計200個の2細胞期胚を12匹の偽妊娠第1日目の受容雌へ移植した結果,5匹(約42%)が分娩し,雄9匹および雌10匹の合計19匹(約10%)の新生仔が得られた。一方,合計97個の2細胞期胚を偽妊娠第2日目の受容雌6匹に移植した結果,妊娠し分娩に至った例は得られなかった。
以上のことから,卵子提供雌より性周期が1日若い受容雌への移植が胚の発生において重要と考えられる。

著者関連情報
© 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top