家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
黄体ホルモンと性腺刺激ホルモンによる微弱発情牛及び無発情牛の排卵誘起と受胎性
湯原 正高内海 恭三
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1985 年 31 巻 4 号 p. 198-202

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抄録

ホルモンの組合せ投与による微弱発情牛及び無発情牛の排卵誘起と受胎性の促進を目的として本研究を行った。
発情が微弱で分娩後117日以上も不受胎を示すホルスタイン種経産牛を第1群とした。第2群は,分娩後165日以上の空胎期間をもつ卵巣静止のホルスタイン種及び黒毛和種を用いた。第3群には,最初の授精から32ヶ月以上の不受胎を示す卵胞発育障害の黒毛和種3頭を用いた。
第1群の牛に対しては,性周期の9日~14日まで日量20mgのPを6日間毎日皮下注射した。第2群の牛には任意の日から,日量50mgのPを6日間皮下注射し,Pの最終注射から48時間後にPMSG1,000IUを筋肉内に注射し,さらに発情発現後,HCG1,000MUを静脈内に注射した。第3群の牛には,10日あけてP20mg,6日間の注射を2回行い,48時間後にPMSG2,000IU,さらに48時間後にPGF25mg,発情発現後hCG1,000MUを注射した。発情した牛は各群とも人工授精を行った。直腸検査によってホルモン注射前後における卵巣状態を追跡した。第1群及び第2群の牛は,直腸検査によって妊娠診断を行った。第3群の牛は,排卵後6日目に子宮灌流による採卵を行い,受精の有無と胚の発育段階を調べた。
第1群の微弱発情牛では,6日間のP注射によってほとんどの牛で良好な発情と排卵が認められ,6頭中5頭が受胎した。
第2群の無発情牛(卵巣静止)では,発情と排卵は認められたが,妊娠の成立は6頭中1頭のみであった。
第3群の牛では,子宮灌流によって,3頭中2頭から受精卵が得られた。
以上の結果から,微弱発情牛では比較的短期間のP処理による受胎が認められた。また,卵巣静止牛でもPと性腺刺激ホルモンの組合せ注射によって明瞭な発情と誘起排卵の可能性が示唆された。

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