1990 年 36 巻 3 号 p. 140-144
片側および両側を実験的に潜伏精巣にした成熟ラットの生殖ホルモン濃度と精巣中インヒビン含量について検討した。潜伏精巣手術を施した精巣は,重量が対照区の約40%まで減少した。しかし,精のう腺重量には影響が見られなかった。血中FSH濃度は,潜伏精巣手術により上昇した。血中LH濃度は対照区と比べて,両側を潜伏精巣にした区(両側区)では上昇したが,片側を潜伏精巣にした区(片側区)では差が見られなかった。血中テストステロン濃度は両側区のみ減少した。精巣中のテストステロン含量は片側区では潜伏精巣で減少し,陰嚢内精巣で増加した。一方,両側区では対照区と比べて有意差が見られなかった。潜伏精巣では精巣中インヒビン含量が片側,両側区ともに減少した。
以上の結果から,潜伏精巣処理後の陰嚢内精巣でのインヒビン産生機能は,テストステロン産生で見られるような代償性の機能亢進が起こらないことが示唆された。