Ellisら(1988)が報告したY染色体特異的DNAプローブES5(300 bp), ES8(630 bp)のうち, ES8について,その1~20bpおよび541~560 bpに対して相補的な塩基配列のプライマーを作製した.これらを用いてPCR法で牛雄雌の細胞DNAを増幅した結果,雄のDNAに対してのみ,未知のDNA断片が現れた.これらの断片は,10-6μgの雄DNAに対するPCR反応でも確認された.
これらDNA断片の塩基配列をジデオキシ法により決定した結果,得られた塩基配列はいずれもES8と同一のものではなかった.また,ES8の塩基配列との相同性の有無について検討した結果,92bpの断片(10-1)では65%,142bpの断片(10-2)では51%,170 bpの断片(10-3)では57%,そして224bpの断片(10-4)では84%の塩基配列に,それぞれ一致が認められた.更に塩基配列の決定されたこれらDNA断片は,牛雄雌の細胞DNAとのハイブリダイゼーションによって,いずれも雄特異1生を有することが認められた.
以上の結果は,これら4つのDNA断片が牛特異的DNAプローブとして利用されうることを示唆している.