日本繁殖生物学会 講演要旨集
第100回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-26
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内分泌
シバヤギ視床下部弓状核のメタスチンニューロンにおける多ニューロン発火活動の一過性上昇は黄体形成ホルモンのパルス状分泌に同期する
*茂木 一孝市丸 徹松山 秀一森 裕司束村 博子前多 敬一郎大蔵 聡岡村 裕昭
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抄録

【目的】メタスチンは視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の放出を介して、下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)分泌を強力に促進することが知られている。本研究では、シバヤギにおけるメタスチンの生理的役割をさらに検討することを目的として、視床下部弓状核のメタスチンニューロンの神経活動を電気生理学的に調べるとともに、その神経活動とLH分泌との関係を検討した。【方法】実験には精巣除去成熟雄シバヤギを用いた。まず、雄シバヤギのメタスチン免疫組織染色像の解析により、視床下部弓状核におけるメタスチンニューロン局在部位の座標を推定した。その座標をもとに外科的に記録電極を慢性的に留置して、その部位における多ニューロン発火活動(MUA)を記録した。同時に頸静脈より連続採血を行い、血中LH濃度の詳細な動態を調べた。また、エストロジェン含有シリコンカプセル(内径3 mm、長さ20 mm)を皮下に埋め込み、MUAの変化を解析した。実験終了後、記録電極の先端を電気破壊して脳を潅流固定し、視床下部切片を抗メタスチン抗体および抗GnRH抗体を用いた免疫組織化学染色に供した。【結果】シバヤギで記録されたMUAにおいて、約30分の間隔で発生する一過性の発火頻度上昇(MUA volley)が観察された。末梢血中のLH濃度はパルス状に推移し、LHパルスはMUA volleyと常に同期していた。また、エストロジェン処理によりMUA volley間隔は次第に延長し、処理後6日目には約50分に達した。電極の留置部位にはメタスチンニューロンの局在が確認された。一方、GnRHニューロンの神経繊維はほとんど観察されなかった。【考察】観測した神経活動は視床下部弓状核のメタスチンニューロン由来であると考えられ、視床下部弓状核に局在するメタスチンニューロンはLHのパルス状分泌に必須なGnRHのパルス状放出の形成に深く関与する可能性が示された。また、弓状核のメタスチンニューロンの神経活動はエストロジェンにより抑制的に制御されることが考えられた。

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© 2007 日本繁殖生物学会
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