日本繁殖生物学会 講演要旨集
第100回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-32
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生殖工学
マウスES細胞の多分化能決定要因の解明
*古澤 軌池田 光美井上 玄志大越 勝広徳永 智之
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抄録
[目的] マウスES細胞(胚性幹細胞、embryonic stem cells)は胚盤胞の内部細胞塊に由来する、高度の多能性を維持した細胞株である。これまで我々は、マウスES細胞にはPECAM1(platelet-endothelial cell-adhesion molecule 1)とSSEA-1(stage-specific embryonic antigen-1)の発現量に差がある亜集団が存在し、PECAM1の発現はES細胞の未分化性と、また、SSEA-1の発現は胚盤胞期以降のエピブラストへの寄与能力と相関があることを明らかにしてきた。これら亜集団の分化能と性質を決定する要因を明らかにするため、亜集団の遺伝子発現およびエピジェネティクス解析を行った。
[方法] マイクロアレイ解析によってPECAM1およびSSEA-1の発現に伴って変動する遺伝子群を同定した。次に、PECAM1陽性細胞、すなわち、未分化な細胞で発現が高いと判定された遺伝子の中から、幹細胞および初期発生における機能が不明な23遺伝子をピックアップし、RNAi(RNA interference)法によりES細胞および初期胚における機能解析を行った。
[結果・考察] PECAM1陽性細胞で発現が高いと判定された遺伝子群には、Oct3/4Nanogなどの予想された遺伝子が含まれていた。ピックアップした遺伝子についてノックダウン解析を行ったところ、6遺伝子において、未分化細胞の減少や、胚発生の遅延等が観察された。一方、SSEA-1陰性と陽性細胞は非常に良く似た遺伝子発現パターンを示したが、グロビン遺伝子群、Igf2Krt1-18およびH19など、エピジェネティックな制御下にある遺伝子の発現に差があることが判った。現在、特にグロビン遺伝子の発現制御領域に注目し、分化能との相関と、bisulfite法およびクロマチン免疫沈降法によるエピジェネティクス解析を行っている。
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© 2007 日本繁殖生物学会
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