日本繁殖生物学会 講演要旨集
第100回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-98
会議情報
生殖工学
雄核発生胚構築において体内及び,体外発生由来前核と形成後の時間差が発生に及ぼす影響
*福田 篤外丸 祐介河野 友宏
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】代表的な雄核発生胚構築方法は「前核期受精卵の核置換」又は,「染色体除去未受精卵への体外受精」が知られている。後者は前者に比べて雌雄前核を取り違える危険は回避できるが発生率が低い。この原因を探るべく,2つの前核が異なる環境下で形成され,前核間が同調及び,非同調の雄核発生胚を構築することによって,体外培養,胎子発生に与える影響について検討した。【方法】BDF1系統の雌マウスにPMSG及び,hCGを48時間間隔で投与することで過剰排卵処置し,同系統の雄マウスと交配させ,体内発生由来雄性前核 (N)を得た。また,hCG投与14-16時間後に採卵した未受精卵から染色体を除去し,同系統を用いて体外受精を行うことで,体外発生由来雄性前核(I)を得た。以下,これらを核移植に供試して2倍体雄核発生胚を構築した。初めに,hCG投与20,24時間後の体内発生由来のN-Nと媒精8,12時間後の体外受精由来のI-Iを構築し,体外発生能を調べた。次に,hCG投与24時間後由来のNとその卵細胞質をレシピエントとして,そこへ媒精8,12時間後のIを核移植することでN-I8h及び,N-I12hの体外発生,及び胎子形成率を検討した。【結果】胚盤胞までの発生率において,N-N間ではN-N24hの方が有意に高く,I-I間では差がなかった。また,N-Nは5割前後(46.5%,61.7%)の発生率に対して,I-Iでは3割未満(26.6%,25.7%)と有意に低かった。N-I8hは2前核で約4時間の差がありN-I12hでは2前核がほぼ同調しているが,これらは胚盤胞(40.7%,36.4%),胎子(29.8%,25.0%)までの発生率に差はなかった。しかし,N-N24hと比べると胚盤胞までの発生が有意に低下した。以上の結果より,I-Iでの発生率低下の原因は受精後の前核形成環境による核へのダメージが原因であると推測された。また,2前核間での時間差による発生への影響は認められなかった。

著者関連情報
© 2007 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top