日本繁殖生物学会 講演要旨集
第101回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-35
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内分泌
ヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子導入transgenic(TG)ラットの雄における視床下部‐下垂体‐精巣軸の障害機序
*大前 良征宮崎 伸男西原 真杉太田 昭彦
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抄録

【目的】ヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子を導入した齧歯類TG動物では、雌のみならず雄においても不妊や生殖機能障害を引き起こすことが報告されている。その原因は主に、hGHの齧歯類に対するPRL様作用とされているが、その機序の詳細は明らかではない。そこで、マウス乳清酸性タンパク(mWAP)/hGH遺伝子を導入したhGH発現量の異なるTGラットの2系統(High-Line、Low-Line)の雄を用いて、hGHの視床下部‐下垂体‐精巣軸に対する障害機序を追究した。【方法】24週齢のhGH-TG雄ラットを使用した。GnRHテストは酢酸フェルチレリン(1μg/kgBW)、hCGテストはhCG(10IU/kgBW)を投与し経時的に採血した。また、去勢前後の頸静脈カニュレーションによる連続採血を行い、LH分泌動態の比較検討を行った。【結果】Low-LineにおけるGnRH負荷によるLH分泌能は対照(WT)に比べ、著しく上昇していた。hCG負荷によるテストステロン(T)分泌能はWTに比べて低下していた。また、LHパルス頻度はWTに比べ変化はなかったが、振幅および濃度はWTに比べ著しく高い値を示した。しかしながら、WTで認められた去勢によるLHパルス頻度、振幅、濃度の上昇は認められなかった。したがって、Low-Line においては精巣のLHに対するT分泌の反応性に障害があることが示唆された。一方、High-Lineでは、GnRH負荷によるLH分泌能およびhCGによるT分泌能はWTに比べ、著しく低下していた。またLHパルス頻度、振幅、総平均濃度はWTと比べ低い値を示し、去勢によるLHパルス頻度、振幅、濃度の上昇もほとんど認められずWTのそれらに比べて著しく低い値となった。これらのことから、High-Lineではさらに視床下部のGnRH分泌、下垂体のLH分泌にも障害があることが示された。以上によりhGHは2系統のTGラットにおいて、異なる機序によって視床下部‐下垂体‐精巣軸に障害を与えている可能性が示唆された。

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