日本繁殖生物学会 講演要旨集
第101回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-29
会議情報

生殖工学
性成熟および未性成熟個体由来ウシ卵子の体外成熟におけるリコンビナントインスリン様成長因子I型添加の影響と同因子レセプター遺伝子の発現
*脇 詩織日巻 武裕大久保 幸弘三好 和睦吉田 光敏
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】体外受精および胚発生技術は研究や産業目的に使われる重要なツールである。本研究では,性成熟および未性成熟個体由来ウシ卵子の体外成熟における成熟培地へのリコンビナントインスリン様成長因子I型(recombinant Insulin-like growth factor-I;rIGF-I)添加が卵子の体外成熟・体外受精・体外発生能に及ぼす影響を検討するとともに,卵巣採取個体の性成熟状況が卵子の体外成熟過程におけるIGF-I-レセプター(IGF-I-R)遺伝子発現状況に及ぼす影響を調べた。【方法】性成熟個体由来卵子は食肉センター由来のウシ卵巣(24~30カ月齢)より,未性成熟個体由来卵子は黒毛和種の未性成熟生体(9~12カ月齢)からSpay法にて摘出した卵巣より採取し,それぞれ,卵子の体外成熟・体外受精・体外発生を行った。実験1では成熟培地への100ng/ml rIGF-I添加がウシ卵子の体外成熟・体外受精・体外発生能に及ぼす影響を検討した。実験2では逆転写-PCR法により卵巣採取個体の性成熟状況がウシ卵子の体外成熟過程におけるIGF-I-R遺伝子発現状況に及ぼす影響を調べた。【結果】胚盤胞形成率はrIGF-I添加の有無に関わらず性成熟個体由来卵子が未性成熟個体由来卵子に比べ有意に高かった (P<0.05)。さらに,性成熟個体由来卵子における胚盤胞形成率はrIGF-I添加区で無添加区と比べて有意に増加した(P<0.05)。しかし,未性成熟個体由来卵子では同様の効果は見られなかった。一方,体外成熟卵子におけるIGF-I-R遺伝子発現率は未性成熟個体由来卵子で性成熟個体由来卵子に比べ有意に低かった(P<0.05)。以上の結果から,体外成熟培地へのrIGF-I添加は,性成熟個体由来卵子の体外発生能の向上に有効であるが,未性成熟個体由来卵子においては無効であることが示された。そして,その原因として性成熟状況における卵子のIGF-I-R遺伝子発現状況の違いが示唆された。

著者関連情報
© 2008 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top