日本繁殖生物学会 講演要旨集
第101回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-45
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生殖工学
ウシ羊水細胞からの胎子細胞単離とクローン胚の作製
*谷口 俊仁林 登阿部 悠季松井 孝徳岩本 太作福原 順子岸上 哲士岸 昌生松本 和也細井 美彦入谷 明佐伯 和弘
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抄録
クローン検定は、肉用種雄牛候補のクローンの産肉性をみることで候補の能力を検定する方法であり、従来の検定法と比較して、期間の短縮および低コスト化が可能である。我々は妊娠中の胎子細胞を用いることで、より短期かつ低コストでクローン検定ができると考え、羊水中の胚由来細胞を用いたクローン胚を作出した(林ら、第14回胚移植研究会大会講演要旨集、2007)。しかし、それら胚の受胎率は極めて低く(4%、1/25)、細胞の構成割合を調べたところ、胎子細胞は20%以下であり、羊膜細胞が約80%と多数を占めていた(未発表)。そこで我々は、羊水細胞から胎子細胞の単離を試み、それらを用いたクローン胚を作製し、さらに胚の受胎性を検討した。
黒毛和種ウシ羊水から得られたオス胚由来細胞株を実験に用いた。まず、この細胞株からコロニー分離法による胎子細胞の単離を試みたところ、25株のクローン株が得られた。それらの株について、インターフェロン&tau(IFN)、フィブロネクチン(FN)およびサイトケラチン(CK)のmRNA発現を RT-PCRで調べ、さらにウシY染色体特異的プライマー(BOV97M)を用いた PCRによる性判別をおこなった。その結果、2株が[IFN(-)、FN(-)、CK(+)、オス]、21株が[IFN(+)、FN(-)、CK(+)、オス]、2株が[IFN(-)、FN(+)、CK(-)、メス]であり、それぞれ胎子上皮細胞、羊膜上皮細胞、母体由来繊維芽細胞であると考えられた。得られた胎子細胞(AおよびB株)から作製されたクローン胚の胚盤胞期胚への発生率は、それぞれ7%、13%であり、対照の繊維芽細胞によるクローン胚と同等であった(p>0.05)。さらに、B株由来クローン胚を5頭の受胚雌ウシへ胚を移植したところ、1頭で受胎が確認された。以上の結果より、ウシ培養羊水細胞中から胎子細胞が単離でき、それらから受胎性を有するクローン胚が作製できることが示された。
この研究はJST・和歌山県地域結集型共同研究事業によりおこなわれた。
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© 2008 日本繁殖生物学会
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