日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-23
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性周期・妊娠
ツシマヤマネコ(Prionailurus bengalensis euptilurus)の繁殖内分泌モニタリングのための糞中性ステロイドホルモン代謝物の定量と定性
*足立 樹楠田 哲士永尾 英史平良 由美子淺野 玄坪田 敏男土井 守
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抄録

【目的】ツシマヤマネコは国内で最も絶滅のおそれの高い哺乳類の一種であり、現在4施設で飼育下繁殖の取り組みが行われている。そこで本種の繁殖生理の解明を目的として、糞中の性ステロイドホルモン代謝物の測定による非侵襲的な内分泌動態のモニタリングを行った。さらにその測定法の有効性を検討するため、糞中の性ステロイドホルモン代謝物の定性分析を行った。【方法】福岡市動物園で飼育されていた雌のツシマヤマネコ1頭を対象として、2004~2006年の交尾期および妊娠期を含む時期に糞を採取した。糞は凍結乾燥後に80%メタノールで性ステロイドホルモン代謝物を抽出し、エストラジオール-17β(E2)およびプロジェステロン(P4)抗体を用いた酵素免疫測定法によりそれぞれの代謝物を定量した。また、代謝物を明らかにするため、E2含量の高い期間および妊娠期間中の糞をメタノール抽出してSep-Pak C18カートリッジを用いて精製し、E2およびP4代謝物の分離を逆相HPLCにより行った。回収したフラクション中のE2およびP4代謝物の免疫反応性のピークを、E2代謝物2種およびP4代謝物6種の標準物質の溶出時間と比較した。【結果】糞中E2代謝物含量は、交尾前に明確な上昇を示し、糞中P4代謝物含量は、交尾日以降顕著な上昇を示した。糞中E2代謝物の定性分析の結果、E2およびエストロン(E1)の溶出位置と一致する明確なピークが認められた。妊娠期の糞中にはP4はわずかで、5α-pregnane-3α-ol-20-one、5α-pregnane-3β-ol-20-oneおよび5α-pregnane-3α、20-dioneの溶出位置と一致する明確なピークが認められた。以上の結果から、ツシマヤマネコの糞を用いた卵胞活動のモニタリングにはE2またはE1の測定が、また排卵や妊娠のモニタリングには5α系プレグナンに高い交叉性をもつ抗体を用いた測定が有効であることが示された。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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