日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-53
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内分泌
ウマLH抗体を用いたEIAによるブラジルバクの血中LH濃度測定系の検討
*森角 興起佐藤 英雄小泉 純一
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抄録

横浜市繁殖センターでは、エンザイムイムノアッセイ(EIA)を用いて、ブラジルバク(Tapirus terrestris)雌個体の血中プロゲステロン(P4)の測定を行い発情周期の把握を行ってきた。今回、さらに正確な発情周期の把握と生殖生理メカニズムの解明を目的として、LH測定系の作成と性能検討を行った。
同じ奇蹄目であるウマのLH抗体とLH標準物をNational Hormone & Peptide Program Harbor-UCLA Medical Centerより購入し、まずPeroxidase Labeling Kit-NH2(同仁科学研究所)を使用しLH標準物をペルオキシダーゼ(HRP)で標識しLH-HRPを作成した。さらに、LH抗体とLH-HRPの最適濃度決定試験を経て、標準曲線の作成と希釈試験を行い測定系の評価を実施した。その後、血中P4濃度の変動との比較検討を試みた。対象個体は16歳の雌で、採血の頻度は概ね週1回から3回のペースであった。
濃度決定試験の結果、LH抗体20万倍とLH-HRP100万倍の組み合わせで最適となり、標準曲線は0.97ng/ml~500ng/mlの範囲で良好な曲線を得られた。希釈試験ではホルモンを含むサンプルの測定値と標準曲線の間に概ね平行性が確認された。
血中LHの動態は、発情周期を示すP4の測定値が基底値まで低下した時期の数回において、68ng/mlから140ng/ml、81ng/mlから222ng/ml、54ng/mlから189ng/mlへの上昇を示したが、上昇はP4の低下時に必ず確認される結果とはならなかった。
P4の低下時にLH上昇の確認が数例であった理由は、採血間隔が、3日から10日程度空いていたためピークをつかめなかったものと思われた。確認できたLHの上昇はP4の周期と連動していたことから、作成した測定系はある程度ブラジルバクのLH測定に有効であることが示唆された。

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