日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-90
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生殖工学
卵胞刺激処理したドナー牛より採取した高品質卵子の体外受精
*今井 敬ソムファイ タマス稲葉 泰志大竹 正樹相川 芳雄小林 修司小西 一之
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抄録

【目的】過剰排卵処理による胚生産はドナー牛の個体差や優勢卵胞の影響を受け、採胚成績が安定しない。卵巣には様々な形態および機能を有した卵胞が存在し、その卵胞のバラツキが過剰排卵処理に対する反応性の差として表現される。これまでに確立した卵胞発育の同調法とFSH処理後、経腟採卵(OPU)により発生率の高い卵子が採取可能となった。本研究ではこの発育性の高い卵子の特性を明らかにするために、FSH処理したドナー牛より卵子を採取し、精子侵入および初期発生について検討した。 【方法】延べ17頭の黒毛和種供胚牛を供試した。発情周期の任意の時期に1回目のOPUを実施した(OPU区)。その後4日目に優勢卵胞を除去し、CIDRを装着した7日目からFSH処理(4日間8回、計20AU)を実施した。9日目にPGF2αを投与し、11日目にCIDR除去後2回目のOPUを実施し、卵子を採取した(SOV-OPU区)。採取した卵子の体外受精後の精子侵入状況を媒精後12-18hにホールマウント標本を作製して検査した。初期卵割は体外受精した卵子をリアルタイム細胞観察培養装置で培養し、15minに1枚の割合で写真を撮り、卵割状況を分析した。OPU区とSOV-OPU区における卵子の発生を比較した。 【結果】OPU区とSOV-OPU区における卵子の採取数を比較すると、卵胞数には差はなかったが、採取率に有意差(p<0.05)が認められ、SOV-OPU区で卵子の採取率が低下することが示された。しかし、SOV-OPU区では採取卵子の形態学的な正常卵子率が高く、正常卵子数は両区で差は認められなかった。精子侵入状況の検査では成熟率および精子侵入率に差は認められなかった。しかし、SOV-OPU区の卵子は単精子侵入卵子の割合が高く、多精子受精は少ないことが明らかとなった。また、卵割時間は第一卵割から第二卵割までの時間が有意に短くなり、第三卵割終了までの時間も平均で1.2hSOV-OPU区が短くなった。本研究の一部は生研センター異分野融合研究支援事業の助成を受けた。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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