日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-16
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臨床・応用技術
シリコンエラストマー製チャンバーによるガラス吸着性精子の運動軌跡測定
*松浦 宏治山下 佳佑黒田 ユカ舟橋 弘晃
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抄録

【目的】精子の受精能を評価するためには、「運動率」および「直進運動性」を顕微鏡下で計測する方法が一般的である。しかし、ブタ精子はガラスやプラスチックに吸着し、著しく運動性が損なわれるために、運動軌跡の正確な記録が出来ず、受精率に関与する直進運動性の評価が難しかった。顕微鏡下で軌跡を正確に記録するためには、精子が吸着せずかつ透明な材料を使用する必要がある。今回、シリコンエラストマープレパラートを使用した場合、直進運動性が著しく損なわれること無く運動軌跡を測定・記録が可能となった。 【方法】ブタ精液のTL-HEPES-PVAによる5倍希釈液のプレパラートを作製した。作製直後の運動率は約90%であった。今回、ガラス製とシリコンエラストマー(Polydimethylsiloxiane:PDMS)製の二種類のプレパラートを比較した。精子の運動軌跡記録・解析は、10倍のBMレンズ(ニコン)を装着した顕微鏡像をSperm Motility Analysis System(SMAS)(加賀電子)を使用してプレパラート作製直後と15分後に行った。 【結果】ガラスの場合15分後にはほとんどの精子が吸着したが、PDMSの場合は一部のみの吸着が見られた。直進運動速度分布については、作製直後は34.3(μm/sec)、ガラス15分後は7.9(μm/sec)、PDMS15分後は33.3(μm/sec)であった。作製直後とPDMS15分後のデータ間に有意差は得られなかった(P>0.05)。平均頭部振幅は、作製直後5.4(μm)、ガラス15分後2.1(μm)、PDMS15分後3.7(μm)であった。精子頭部の吸着により直進運動性が著しく損なわれることが定量的に確認された。また、PDMSにマイクロ構造体を転写できるため、マイクロルーラーを転写したPDMSプレパラートを用いれば、運動軌跡解析システムが無くても直進運動速度を定量的に評価できる。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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