日本繁殖生物学会 講演要旨集
第107回日本繁殖生物学会大会
セッションID: AW-3
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卵・受精
マウス初期胚の全能性を支える遺伝子を活性化するノンコーディングRNAの同定
*浜崎 伸彦上坂 将弘中島 欽一阿形 清和今村 拓也
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抄録

【目的】 タンパク質に翻訳されない長鎖RNA(ncRNA)はmRNAの10倍以上存在することから,これらが卵割期の細胞の全能性を支えている可能性を検討するため,Directional RNA-Seqによりマウス初期胚のmRNA/ncRNA情報を得ることとした。 【方法】 8週齢C57BL6/C3H F1雌マウスの未受精卵,2細胞期胚からcDNAを調整し,イルミナ社HiSeq2000により解析した。新規ncRNAの機能解析には,siRNAインジェクション胚を作製し,トランスクリプトーム解析とバイサルファイトシーケンス解析に供した。 【結果】 トランスクリプトーム解析から,遺伝子とプロモーターを共有し,遺伝子とは反対方向に発現するpromoter-associated ncRNA(pancRNA)が二細胞期に1169もの遺伝子座に存在することを見つけた。pancRNAを持つ遺伝子群は持たない遺伝子群と比較して3倍以上平均発現レベルが高かった。発現量上位3つのpancRNAをノックダウンすると,該当プロモーターDNAメチル化レベルが上昇し,遺伝子の発現上昇が阻害された。このうち,pancIl17dノックダウン胚については,胚盤胞期までに高率にアポトーシスを起こし胚性致死となった(78.5% vsコントロール群:30.4%)。また,pancIl17dノックダウン胚からはES細胞様コロニーが形成されなかった。これらはpancIl17dのノックダウン胚のトランスクリプトーム解析結果にも支持され,例えば多能性規定因子群Nanog/Cdx2が発現低下していた。上記の多能性喪失状態はIL17Dタンパク質の培地添加により回復できた。また,pancIl17dを介したDNA脱メチル化の協働因子として,TET3,及びDNA修復系に関与する酵素群PARP,XRCC1を同定した。 【考察】 全能性獲得には,pancIl17dに代表される多数のncRNAによるエピゲノム制御を介した遺伝子活性化が重要な機能を果たすことが示唆された。

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© 2014 日本繁殖生物学会
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