日本繁殖生物学会 講演要旨集
第107回日本繁殖生物学会大会
セッションID: AW-5
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生殖工学
Fluorescence Recovery After Photobleaching (FRAP)法によるマウス着床前初期胚のクロマチン構造の解析
*大我 政敏橋本 聖フルコバ ヘレナ青木 不学
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抄録

【目的】受精後の胚は分化全能性を有しているが,着床前発生の進行に伴って全能性を失い,桑実胚期から胚盤胞期にかけて多能性となる。しかしながら,この着床前初期胚の分化能の変化を制御する分子メカニズムは明らかになっていない。緩いクロマチン構造を有する多能性のEmbryonic stem (ES) 細胞は,分化によってクロマチン構造が締まったものになることが知られている。そこで本研究では,全能性を有する1細胞期胚は緩んだクロマチン構造を有するが,着床前発生の進行に伴って次第に締まったクロマチン構造を獲得するとの仮説を立て,これを検証することを目的とした。 【方法】1,2,4細胞期胚,桑実胚期胚,胚盤胞期胚ならびにES 細胞について,eGFPで標識したヒストンH2B(eGFP-H2B)の置換の速度(mobility)をクロマチンの緩みの程度の指標として用いた,Fluorescence Recovery After Photobleaching (FRAP)法により解析した。 【結果および考察】まず,着床前胚発生過程におけるeGFP-H2Bのmobilityを解析した結果,1細胞期胚でクロマチンは最も緩い構造をとり,発生の進行にしたがって,次第に締まった構造へと変化することが明らかとなった。胚盤胞期において,内部細胞塊と栄養外胚葉におけるeGFP-H2Bのmobilityを比較したところ,より未分化な内部細胞塊の方が緩いクロマチン構造を有していた。さらに,緩いクロマチン構造を持つと考えられているES細胞は,eGFP-H2Bのmobilityが内部細胞塊と同程度であった。以上より,1,2,4細胞期の胚はES細胞よりも緩いクロマチン構造を有しており,着床前初期胚が発生の進行に伴って次第に締まったクロマチン構造を獲得すること,そしてこの変化が全能性から多能性への変化に関与することが示唆された。

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© 2014 日本繁殖生物学会
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