日本繁殖生物学会 講演要旨集
第107回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-21
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生殖工学
ROSI前核期胚におけるDNA脱メチル化の異常
*黒滝 陽子及川 真実畑中 勇輝越後貫 成美井上 貴美子小倉 淳郎
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抄録
【目的】マウス円形精子細胞を用いた顕微授精 (round spermatid injection; ROSI)での産仔率は精子を用いた場合と比較して低く,またその原因は明らかにされていない。マウス前核期胚では雄性前核で能動的にDNA脱メチル化が引き起こされることが知られている。ROSI前核期胚では父性ゲノムにおけるDNAメチル化の異常が指摘されており,産仔率の低さとの関連が疑われている。本研究ではまず,ROSI胚におけるDNAメチル化と脱メチル化の関係性について解析をおこなった。【方法】ROSIでは円形精子細胞を,コントロールでは卵活性化因子を不活化した精子をそれぞれ用いて,ストロンチウムで活性化した卵子に顕微授精した。その後,4,6,10時間後の前核期胚を4%パラホルム固定し,蛍光抗体法にて5-methylcytosine (5mC)と5-hydroxymethylcytosine (5hmC)を染色して観察をおこなった。【結果および考察】5mCと5hmCそれぞれについて,同一胚の雄性前核/雌性前核の蛍光強度比を観察したところ,顕微授精10時間後のコントロール胚では,正常通り5mCの低下と5hmCの上昇が見られた。一方ROSI胚では5mCと5hmCの関係性に2つのパターンが見られ,1つはコントロールと同様のパターン,もう1つは5mCと5hmCのいずれも同程度のレベルで推移する異常な胚のパターンがあることが明らかになった。雄性前核における5mCから5hmCへの能動的DNA脱メチル化(ヒドロキシメチル化)は水酸化酵素であるTET3 (ten-eleven translocation)により変換されることから,一部の異常なROSI胚の5mCと5hmCの関係はTET3の酸化反応が正常におこなわれていない可能性が考えられる。今後,ROSI胚におけるTet3他の関連因子の動態を明らかにしていく予定である。
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© 2014 日本繁殖生物学会
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