日本繁殖生物学会 講演要旨集
第107回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-5
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精巣・精子
暑熱ストレス依存的な精巣障害に対する源生林あしたば成分の保護効果
*阿部 友紀子國府 大智澤田 結衣浅野 敦之宮崎 均
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抄録
【目的】畜産業界において夏季不妊は深刻な問題であり,これは雌雄両方に起因する。通常精巣は精子形成のため体温よりも低い温度に保たれているが,外部温度の上昇は精液量,精子数の減少とその運動性の低下,奇形率の増加を引き起こす。あしたば(Angelica Keiskei)は八丈島原産のセリ科植物であり,古くから食用や薬用として用いられている。当研究室では,雌ラットへのあしたば投与が暑熱依存的な卵巣での排卵数減少をほぼ完全に回復させることを明らかにしている。そこで本研究では,暑熱ストレスに対するあしたばの精巣保護作用について検討を行った。【方法】8週齢の雄ICRマウスにあしたばカルコンパウダー(日本生物科学研究所)を75 mg/kg/dayで経口投与し,0,1,3,7日後にそれぞれ解剖,Westertn Blottingで抗酸化酵素群の発現レベルを評価した。さらに暑熱ストレスに対するあしたば投与の長期的な影響を検討するため,対照区(33℃)と暑熱区(42℃)の恒温槽で20分間処理を行い28日後に解剖して精巣を摘出し,精子濃度,受精能の測定及び抗酸化酵素発現レベルの評価を行った。また,精巣内の酸化還元レベルをGSSG/GSH Quantification Kit(同仁化学)を用いて測定した。【結果】精巣での抗酸化酵素の発現レベルは,あしたばパウダー投与日数の経過と共に増加傾向を示し,長期投与群でも同様の結果となった。28日後解剖では暑熱区において精子濃度および受精能が減少したものの,あしたばパウダー投与群では共に改善が見られた。また,42℃処理で精巣内のGSSH(還元型グルタチオン)の比率が低下したことから,暑熱ストレスが酸化ストレスに変換されたことが確認された。これらの結果は,あしたばが精巣内において抗酸化酵素の発現を増加させ,暑熱ストレスに対する抵抗性を付与したことを示す。以上のことより,家畜の夏季不妊に対しあしたばは雌雄両方に対しその有用性が期待できることが明らかとなった。
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© 2014 日本繁殖生物学会
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