日本繁殖生物学会 講演要旨集
第107回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-51
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卵・受精
ウシ初期胞状卵胞由来卵母細胞の体外発育に及ぼすイソブチルメチル キサンチン(IBMX)の影響
*松原 佑里子牧田 美穂宮野 隆
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抄録

【目的】卵巣内の卵母細胞は発育を完了した後も,性腺刺激ホルモンの刺激を受けるまで減数分裂を停止している。初期胞状卵胞由来の直径約110 µmのウシ卵母細胞は減数分裂を再開する能力を一部獲得しているが,成熟する能力は持たず,成熟能力を獲得させるには発育培養が必要である。しかし,発育の間,卵母細胞の減数分裂の早期再開を抑制する必要がある。本研究では,ウシ卵母細胞の減数分裂再開を抑制するとの報告(Aktasら,1995)のあるIBMXを発育培養液に添加し,発育培養期間中の卵母細胞の発育と成熟能力獲得に及ぼす影響を調べた。【方法】直径1.2~1.5 mmのウシ初期胞状卵胞より,直径105~115 µmの発育途上の卵母細胞を含む卵丘細胞‐卵母細胞複合体(COCs)を採取し,0.25~100 µMのIBMXを添加した発育培養液中で5 日間発育培養した。発育培養後に卵母細胞を固定し,核相を観察した。さらに,その後成熟培養を行い,卵母細胞の成熟能力を調べた。【結果】初期胞状卵胞由来の平均直径約110 µmの卵母細胞を5 日間発育培養すると,いずれの実験区においても卵母細胞は高い生存性を示し(70~98 %),平均直径は120 µm以上へと増加した。また,発育培養期間中,2.5 µM以上の濃度のIBMXを添加した実験区では半数以上のCOCs中に卵胞腔様構造が形成された(無添加区:約30 %)。IBMX無添加区では発育培養後,約30 %の卵母細胞が減数分裂を再開していたが,IBMX添加区では卵母細胞の減数分裂再開は用量依存的に抑制された。さらに,IBMX添加区の卵母細胞では,その後の成熟培養によって第二減数分裂中期への成熟率が上昇した。本研究より,IBMXは,直径1.2~1.5 mmの初期胞状卵胞由来のウシ卵母細胞の体外発育培養期間中の減数分裂の早期再開を抑制し,卵母細胞の成熟能力獲得を促進することが明らかとなった。

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© 2014 日本繁殖生物学会
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