日本繁殖生物学会 講演要旨集
第108回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-104
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生殖工学
ブタ体外生産胚の発生能評価:EmbryoScopeによる解析
*勝俣 佑紀中野 和明浅野 吉則内倉 鮎子畑江 将太武石 透輝八島 紗耶香福田 暢梅木 育磨笠井 悠里松成 ひとみ長嶋 比呂志
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抄録

[目的]ブタを実験動物として利用する医学研究の進展に伴い,ブタの発生工学基盤の充実が求められている。本研究では,初期胚の形態的特徴を基準とした発生能の予測精度検証の目的で,タイムラプス胚培養装置(EmbryoScope®)によるブタ胚の経時観察を行った。[方法]ブタ体外成熟卵に電気的活性化による単為発生を誘起し,PZM-5で体外発生培養を行った。活性化96時間後に胚を形態的特徴から以下の7区に分類した:Compact morula(CM),正常割球が全体の半分以上を占めるCM(≧50CM),正常割球が半分以下のCM(<50CM),Pre-compact morula(PM),割球が不揃いなmorula様胚(ML),fragmentation(F),発達遅延胚(D)。実験1:各分類の胚を通常の微小滴培養法(5~10胚/drop)で3日間培養し,胚盤胞への発達を指標に,それぞれの発達能を評価した。実験2:各分類の胚をEmbryoScopeを用いて3日間培養し(撮影間隔:15分),胚の発達動態を比較した。培養には10%ウシ胎仔血清加PZM-5を用い,気相条件は38.5℃,5%O2/5%CO2/90%N2とした。[結果と考察] 実験1:CM,≧50CM,<50CM,PMの胚盤胞形成率は,それぞれ100%(22/22),96.8%(30/31),85.7%(30/35),91.2%(31/34)であった。本実験例数の範囲内では各区に有意差は見られなかったが,CMと判定された胚はほぼ確実に胚盤胞への発達能を持つことが明らかとなった。 一方,ML,F,Dの胚盤胞形成率は,33.3%(21/63),5.6%(1/18),38.5%(10/26)であった(上位4区と有意差あり; P<0.05)。実験2:EmbryoScopeによる各区の胚盤胞形成率は通常培養の成績と同等であった。CMとPMの違いは活性化96時間におけるコンパクションの有無であるが,両者の胚盤胞への到達時間はほぼ同等であった(102.4±1.0 vs. 104.6±1.4 h)。また,正常割球の割合が異なる≧50CMと<50CMの比較においても,胚盤胞への到達時間に差は見られなかった(107.2±1.2 vs. 108.1±0.7 h)。胚の培養期間中に見られる胚盤胞腔の収縮・再拡張の回数(1.8~2.2回)には,区間差は見られなかった。

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© 2015 日本繁殖生物学会
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