日本繁殖生物学会 講演要旨集
第108回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-38
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精巣・精子
Germline Stem (GS) 細胞の精子形成能獲得に必要な遺伝子の探索
*鈴木 伸之介池田 理恵子浦 大樹佐藤 卓也小川 毅彦阿部 訓也
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抄録

【目的】生殖細胞は次世代に遺伝情報を伝える役割を持つ非常に重要な細胞である。生殖細胞である精子は,精巣内の精子幹細胞から長いものでは何十年もの間作られるが,個体への環境ストレスや個体の老化により精巣の精子形成能は低下し,不妊となる。しかし,精子の元となる精子幹細胞は精巣細胞のうち0.02–0.03%の割合でしか存在しないために,詳細な解析は非常に困難であり,精子幹細胞がどのようなメカニズムで精子形成能を維持しているかは十分に理解されていない。そこで,生体外で精子形成能を維持しながら培養が可能な精子幹細胞株(GS細胞)を実験材料とし,精子形成能を維持する分子機構を解明することを試みている。【方法】精子形成能を持つGS細胞をマイクロドロップ中で培養すると一定の頻度で精子形成能を失ったdGS細胞(defective GS細胞)が出現する。dGS細胞はGS細胞と同様な形態を示し,継代培養可能だが,精細管移植後,精子に分化することができない。したがって,dGSと正常GSを比較することにより,精子形成能喪失の原因を特定できると考えられる。そこで,正常GS細胞とdGS細胞の遺伝子発現プロファイルを比較し,候補遺伝子を検索する。次に,候補遺伝子の過剰発現,CRISPR/Cas9システムによる遺伝子欠損などの機能解析を行いGS細胞の精子形成能の獲得・維持に必要な遺伝子を同定する。 【結果】複数のdGS細胞株と親株である正常GS細胞の遺伝子発現プロファイルをマイクロアレイ法により解析した。その結果,正常GS細胞と比較して解析したすべてのdGS細胞に共通して遺伝子発現量が有意に減少している約130の遺伝子を同定した。これらの遺伝子の多くはX染色体上に存在しており,興味深いことに精巣と癌細胞に特異的に発現することが知られている癌精巣抗原遺伝子群や,癌精巣抗原遺伝子の発現調節に関与すると考えられる遺伝子が含まれていた。本発表では,これらの遺伝子発現解析結果に加え,過剰発現,遺伝子欠損実験等の機能解析の結果についても言及したい。

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© 2015 日本繁殖生物学会
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