日本繁殖生物学会 講演要旨集
第108回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-72
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生殖工学
ポリエチレングリコール添加によるウシ卵子ガラス化保存の検討
*松田 秀雄山之内 忠幸後藤 由希相川 芳雄大竹 正樹小林 修司橋谷田 豊
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抄録
【目的】ウシ卵子の超低温保存は,経済形質の高い雌遺伝資源の長期的な利用に有効である。現在,卵子の超低温保存にはガラス化が最も有効とされているが,体外受精後の胚盤胞発生率は未だに低い。本研究では,高分子化合物であるポリエチレングリコ—ル(PEG)の卵子ガラス化保存液への添加について検討した。【方法】食肉センター由来の卵巣から採取した卵丘細胞−卵子複合体(COC)を20h体外成熟培養して用いた。対照区はCOCを4% エチレングリコール(EG)に12分間平衡後,35% EG + 4 Mトレハロース+5%ポリビニルピロリドン(PVP)のガラス化液に30秒間曝露し,Cryotopを用いて液体窒素に浸漬し超急速ガラス化保存した。COCは,加温およびガラス化液の希釈後2hの修復培養を行い,家畜改良センター定法によりIVFを行った。試験区は,PVPを添加せずにPEGの濃度区で3% ,5%または 7%を添加した。試験区,ガラス化対照区および新鮮対照区の加温およびIVF後の卵割率,胚盤胞発生率を比較した(試験1)。次に,さらに高濃度のPEG(7%,10%,13%)について,加温後の形態学的観察による生存率,卵割率および胚盤胞発生率を比較した(試験2)。【結果】試験1において,卵割率および胚盤胞発生率は,新鮮対照区がすべての区よりも有意に高く(P<0.01),PEG7%はPEG3%よりも有意に高かった(P<0.05)。試験2において,加温後の生存率は,PEG13%区がほかのすべての区よりも有意に低く(P<0.05),PEG7%区およびPEG10%区は新鮮対照区よりも有意に低かった(P<0.01)。卵割率および胚盤胞発生率は,すべてのPEG区が新鮮対照区よりも有意に低かったが,各PEG区間に差は認められなかった(P<0.01)。ガラス化液中のPEG濃度が13%で加温後の卵子の形態学的生存率が有意に低くなること,PEG濃度が3%よりも7%で卵割率および胚盤胞発生率が有意に高いことから,ガラス化液中の至適PEG濃度は3%以上13%未満であることが示唆された。
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© 2015 日本繁殖生物学会
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