日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: AW-5
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卵・受精
多能性幹細胞から卵母細胞を作出する体外培養技術の開発
*日下部 央里絵浜崎 伸彦永松 剛尾畑 やよい平尾 雄二濱田 律雄島本 走今村 拓也中島 欽一斎藤 通紀林 克彦
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抄録

生殖系列のライフサイクルは,生命が永続的であるための基本原理である。特に卵母細胞系列は発生の進行に不可欠であるため,この形成機構の解明は重要である。しかし,卵母細胞は産生数が少なく,胎仔期に分化するため解析が進んでいない。そこで本研究では,完全培養下で,ES/iPS細胞から卵母細胞を作出する培養系構築を目的とした。核型XXのES/iPS細胞をBMP4などを含む培地で始原生殖細胞(PGCLCs)に分化誘導し,卵巣体細胞と混合させ再構成卵巣を作製した。PGCLCsから二次卵胞までをin vitro differenciation(IVDi)培地,二次卵胞からGV卵までの成熟過程をin vitro growth(IVG)培地,GV卵からMII卵までをin vitro maturation(IVM)中により培養した。これらの卵母細胞系列の遺伝子発現をRNA-seqにより生体由来と比較した結果,相関係数はr=0.98以上を示した。またCOBRA法とバイサルファイトシーケンス法にてインプリントを評価した結果,ES細胞由来と生体由来のMII卵の間において差は見られなかった。さらに,得られたMII卵を用いてIVFにより個体形成能を評価した。その結果,IVFにより得られた受精卵の約60%が二細胞期胚へと発生し,これらを移植すると3.5%の割合で産仔が得られた。得られた産仔はすべて成長し,交配した個体はすべて妊孕性をもつことが明らかとなった。これらのことから,多能性幹細胞を起点とした個体形成能を持つ卵母細胞を作出することが可能となった。しかし産仔の得られる確立は未だに十分ではなく,今後も培養系の改良は必要であることが考えられる。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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