日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-17
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生殖工学
フリーズドライ精子の常温長期保存の試み
*鎌田 裕子若山 清香若山 照彦
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抄録

【背景・目的】フリーズドライ精子は–20℃程度の冷凍庫で長期保存することが可能だが,常温保存すると短期間で産仔率が急激に落ちていくことが明らかとなっている。そこで本研究では,精子の室温長期保存を目的として,室温保存した精子による産仔率低下の要因解明を試みた。【方法】①真空のアンプルビン中のフリーズドライ精子を常温で保存し,フリーズドライ精子作製後24時間,2週間の精子を用いてICSIを行い受精率および産仔率を確認した。②真空アンプルビンを水中で開封し,試料作製方法の違いによる真空度を測定した。③実験②により真空であるはずのアンプルビンに多少の空気が混入していることが確認されたことから,産仔率低下の原因は空気の混入であると仮定し,常圧空気中で栓をしたフリーズドライ精子のアンプルビンを作製した。作製後24時間,1週間及び2週間の精子を用いてICSIを行い従来法と産仔率を比較した。【結果・考察】①真空アンプルビンを常温で2週間保存した場合,ICSIした胚の胚盤胞への発生率は24時間保存に比べ有意に低かった。②真空アンプルビンを水中で開封したところ,どのアンプルビンでも気泡が認められ,完全な真空ではないことが明らかとなった。 ③常圧空気入りフリーズドライ精子を用いた場合,2細胞期への発生率は,24時間保存では真空保存精子と差は見られなかったが,1週間保存では低い傾向が見られ,2週間保存では有意に低い結果となった。また,それらの胚を移植した場合の産仔率は,24時間保存でも真空保存精子に比べ低い傾向が見られ,1週間保存では有意に低い結果となった。これらの結果から,常温でフリーズドライ精子を長期保存できない原因は,真空と考えていたアンプルビンに混入していた空気である可能性が示唆された。空気中に含まれている酸素や水分が精子DNAや精子タンパク質を変性させてしまったのではないだろうか。今後は完全に酸素や水分を除去した保存方法について検討する予定である。

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