【目的】アメリカ平原ハタネズミは特定のパートナーと共にpair bondingする行動が認められ,社会行動のモデル動物として知られている。アメリカ平原ハタネズミの行動に関わる遺伝子群を破壊すれば,そのような社会行動に関わる遺伝子を個体レベルで明らかにできると期待される。我々はそのようなゲノム改変のためのツールのひとつとしてアメリカ平原ハタネズミ由来の人工多能性幹細胞の樹立を試みた。【方法】ハタネズミ由来の線維芽細胞へリプログラミングを行うために,Oct3/4,Klf4,Sox2,c-Myc,Lin28,NanogをコードするPiggyBacトランスポゾン(PB-6F),またN末端側にMyoD遺伝子の転写活性化ドメインを融合させた改変型Oct3/4(以後M3O-Oct3/4と記述)を含む6因子をコードするPiggyBacトランスポゾン(PB-R6F)の2種類を導入した。導入後,細胞をハイグロマイシンにて選択し,フィーダー上に播種した。得られたコロニーをpick upし,細胞継代を継続した。【結果】遺伝子導入後,約3週間後に蛍光を発するコロニーが出現し,立体的な細胞増殖が認められた。それらのコロニーをピックアップし,MEFフィーダー上に播種したところ,35コロニーから26のラインを得た。その後の継代経過で野生型Oct3/4を含むPB-6Fでは平坦なコロニーに形態変化が認められたが,改変型Oct3/4を含むPB-R6Fで作成したコロニーは比較的立体的なコロニー形態を維持した。分化能力や細胞学的性質についても現在,検討中である。