日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-7
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性周期・妊娠
同一農場で飼育されるブラウンスイス種及びホルスタイン種乳牛の栄養状態・繁殖性の比較
*黒木 玲実遠藤 なつ美田中 知己
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抄録

【目的】近年,国内での飼養頭数が増加しつつあるブラウンスイス種乳牛(B種)の栄養状態・繁殖性を解明するため,同一農場で飼育されるホルスタイン種(H種)との比較を行った。【方法】フリーバーン牛舎で混合飼育されるB種(未経産5頭,経産8頭)及びH種(未経産4頭,経産18頭)を対象とした。月別の牛群検定成績データから乳量,乳成分を調査した。分娩後の初回排卵状況は,B種6頭,H種11頭において,分娩後30~45日に直腸検査または超音波画像検査を実施し,黄体の有無により判断した。ボディコンディションスコア(BCS),飛節スコア,蹄冠スコアは毎月計測した。慢性ストレスの程度を評価するため,被毛中コルチゾール値(HC)の測定を分娩前50~30日,分娩後10~30日,70~90日,130~150日,190~210日,250~270日の期間に各1回実施した。【結果】B種はH種に比べて1乳期乳量及び最高乳量が有意に少なく,日乳量は分娩後0~49日では有意に少ないものの300日以降は有意に高かった。分娩後30~45日までに黄体が確認された牛の割合はB種では6/6頭(100%)であったのに対し,H種では5/11頭(45.5%)と有意に低くなった。BCSはB種がH種よりも未経産(3.8±0.2 vs. 3.6±0.3)及び分娩後50~99日(3.3±0.4 vs. 2.9±0.4)で有意に高く,蹄冠スコアは,未経産,経産ともにB種がH種よりも有意に低いことが認められた。分娩後70~90日または130~150日に採取した経産牛のHCは品種間の違いが認められなかったが,両品種あわせた経産牛のHCは未経産牛と比べて有意に高かった(3.7±1.2 vs. 2.3±0.7 pg/mg)。【考察】B種はピーク時乳量が少なく,泌乳持続性が高いため,泌乳前期におけるBCSの低下が少なく,分娩後の卵巣機能の回復が早かったと考えられる。経産牛におけるHCの高値は,年齢,分娩,泌乳と関連したストレスの影響を反映している可能性が推察された。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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