【目的】ウシの妊娠は排卵した卵巣側の子宮角で成立する。本研究では,妊娠黄体または妊娠子宮角が,同側および反対側卵巣における卵胞波の出現やGnRH製剤投与により形成された副黄体の維持に及ぼす局所的な影響を検討した。【方法】実験1:人工授精により妊娠したホルスタイン種33頭の経直腸超音波検査所見を解析した。D6~60(発情日=D0)まで6日間隔で1 cm以上の卵胞の位置および直径を記録し,主席卵胞(DF)および卵胞波を同定した。各卵胞波は,黄体と同側群および反対側群に分類した。また,DF径を群間および卵胞波間で比較した。実験2:我々が考案した繁殖プロトコル(前回大会で報告)が実施され,妊娠に至ったホルスタイン種14頭の超音波検査所見を解析した。この繁殖プロトコルでは,人工授精後23日目のGnRH製剤投与によって副黄体形成が誘導される。D23,D35~45およびD60における初期黄体面積および副黄体面積を測定した。D35~45において,初期黄体と同側卵巣内に副黄体が形成された個体を同側群(n=6),反対側に形成された個体を反対側群(n=4)および形成されなかった個体を対照群(n=4)とした。D35~45における副黄体面積およびD60における副黄体維持率について,同側群と反対側群で比較した。また,初期黄体面積については3群間および試験日間で比較した。【結果】実験1:W1(第1卵胞波)を対照値(51.5%)とした黄体同側率は,W4以降で有意に(P<0.05)低下した。一方でDF径は群間および卵胞波間で有意差を認めなかった。実験2:副黄体維持率は,反対側群(0%)と比較して同側群(83.3%)で有意に(P<0.01)高かった。一方で,D35~45における副黄体面積は同側群と反対側群で差はなかった。また,初期黄体面積は3群間および試験日間で有意差を認めなかった。以上より,妊娠黄体または妊娠子宮角と同側の卵巣内において,主席卵胞選抜が抑制的に,副黄体維持が促進的に制御されていることが明らかとなった。