主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第112回日本繁殖生物学会大会
回次: 112
開催地: 北海道大学
開催日: 2019/09/02 - 2019/09/05
【目的】哺乳類における卵胞発育・精子形成は性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のパルス状分泌により制御されている。近年,視床下部弓状核に局在するキスペプチンニューロン(KNDyニューロン)がGnRHパルスジェネレーターとして注目されている。KNDyニューロンが分泌するダイノルフィン(Dyn)はGnRHパルスを抑制することが示唆されているが,視床下部におけるDynの受容体(κオピオイド受容体,KOR)の局在は不明であり,DynによるGnRHパルス抑制機構には不明な点が多い。本研究では,ウイルスベクターを用いた遺伝子導入によりラット視床下部のKOR発現細胞を蛍光標識し,KORニューロンの局在と投射先の解析を行った。【方法】Wistar-Imamichi成熟雌ラットを使用した。KORプロモーター制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)と順行性神経トレーサー(WGA)を発現するレンチウイルスベクターを弓状核および腹内側核(VMH)へ投与した。同時に,卵巣摘出と低濃度エストラジオールチューブのインプラントを行った。2週間後,灌流固定し,凍結脳切片を作製した。In situハイブリダイゼーション法(ISH)と免疫組織化学染色法(IHC)により,KORニューロンの局在と投射先の解析を行った。【結果】GFPとキスペプチンのIHCの二重染色の結果から,KORニューロンがVMHに局在していること,KNDyニューロンがVMHのKORニューロンに投射していることが示唆された。さらに,GFPのIHCとキスペプチンのISHの二重染色によりVMHのKORニューロンがKNDyニューロンに投射していることが示唆された。これらの結果から以下のGnRHパルス抑制機構が存在すると考えられた。血中エストロゲン濃度が上昇するとKNDyニューロンからDynが分泌され,それをVMHのKORが受容する。その結果KORニューロンから分泌された興奮性神経伝達物質がKNDyニューロンの発火を抑制し,続いてGnRHパルスが抑制される。